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復興担う掘削技士

かれこれ1カ月、石巻にいる。日塔(にっとう)安利さん、63歳。山形県村山市にあるボーリング会社の役員であり地質調査技士だ。社員とともに旅館暮らしを続けながら目下、石巻中心部で地盤調査の仕事に従事している。

仕事現場は中央1丁目の旧石巻市分庁舎跡地。ここにパイプやぐらを組み地盤を掘削中。2本を掘る。既に1本は終えた。地層の調査で地下35㍍まで掘り下げ、砂泥層、玉石層、また泥層、そして粘土層であることを確認した。

今は2本目の作業中。こちらは地震による液状化の問題と最深部の粘土層が1平方㌢㍍あたり何キロの圧力に耐えられるかを調べる。「11㍍までいったが軟弱地盤に苦しんでいる。掘っているというより北上川の川底と格闘中」とか。

掘るスピードは1分間に数㌢程度。「いわば紙やすりですり減らしている感じ」。砂泥、玉石層をコンクリートで固めながら掘っているからだ。ボーリング軸の切っ先に埋め込んである工業用ダイヤモンド(直径15㌢、長さが30㌢ほどで厚さが1㌢あまりの鋼管、15万円するという)はその軟弱さに出番はない。

大幅な仕事の遅れに「早くここを終わらせ次の現場(鹿児島県川内市)に向かいたいのだが」とぼやきが出た。今回は隣県での仕事で休みには帰れないこともないが「最近の若い社員は出張をきらうので」とも。自身は旅暮らしでの仕事は慣れた。「全国の原発の現場はほとんど踏んだ。鹿児島もその関連。地層を調べ過去に津波が何回来ているかをしらべる。その次は大間の予定だ」。

ただ、彼は石巻でのボーリングの仕事が終わった後、ここに何階建かの災害復興住宅が建つことは知らなかった。

北上川の歴史が垂直に掘り下げられている

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